【同一労働同一賃金】最高裁判決

こんにちは! 社会保険労務士srです。

【同一労働同一賃金】は、僕にとって、かなり厄介な問題でした。
法律条文的に、又は役所の指導が、労働者よりに思えて、現実の
多くの企業の実態と、乖離が著しいと感じていたからです。

先月(2020年10月13日、15日)最高裁で判決が出ました。
この内容から、自分なりの解釈ができましたので、その辺を説明
させて頂きます。

今回まとめるにあたり、下記2点を参考資料とさせて頂きました。
・月間社労士(2020 11月号)
・11月12日付日本経済新聞(大内信哉神戸大学教授)記事

【判決】の概要

まず、根拠条文は「労働契約法 20条」です。
・仕事内容や責任の程度
・配置転換の範囲
・その他の事情
に基づき待遇格差が、(期間の定めがあることによって)
不合理な労働条件の相違を禁止しています。

この規定は、今年4月施行の
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
いわゆる(パートタイム・有期雇用労働法)8条に移管されました。
この法律の中小企業への施行は、来年20201年4月です。

判決が出た3社の事案の概要は、下記の通りです。

訴訟名 争われた内容(下記内容の有り無し) 結果
メトロコマース ・退職金 不合理ではない
大阪医科薬科大学 ・賞与 不合理ではない
・病気休暇中の賃金 不合理ではない
日本郵便 ・病気休暇中の賃金 不合理
(佐賀、東京、大阪) ・夏期冬期休暇 不合理
・年末年始勤務(特殊勤務)手当 不合理
・扶養手当 不合理
・年始期間の祝日給 不合理

※病気休暇中の賃金については、判決が異なるものになっているが、これは
「長期継続勤務が期待される」雇用かどうかによって判断されている。
尤も、一般企業(中小企業)において、病気休暇中(いわゆる休職中)の
賃金保証は、正社員でも少ないと思われる。

 【判決】内容の考察

1 退職金、賞与の支給については、かなり会社側の判断を尊重する見解
のように思えます。

退職金(部分)に対する判決要旨
「・・。退職金制度の構築に関し、これらの諸般の事情を踏まえて
行われる使用者の裁量判断を尊重する余地は比較的大きい・・・」

賞与(部分)に対する判決要旨
「・・正職員に対して賞与を支給する一方で、アルバイト職員である
原告に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、労働契約法
20条にいう不合理と認められるものにあたらないと解するのが相当・」

そもそも、退職金・賞与については、経営環境・社会情勢によって
必ず支給されるものではなく、場合によっては支給されない場合もある
ものである、ということも大きな要素のように思えます。

また、別視点では、配置転換の差異という要素も、退職金又は賞与支給
の判断材料の一つとして捉えているようにも見受けられました。

2 各種手当(扶養、年末年始等)又は休暇(夏期、年末年始等)
については、職務内容に鑑みて差をつけることは不合理とする判断。

これは、手当休暇それぞれの持つ意味がどこにあるのか?を考えると、
このような判断になるのだろうと思われます。
働く期間や時間に関係ない部分で考えると、正規・非正規で差を設ける
説明がつかない、とも言えます。

まとめ(私見)

この部分は、あくまでも私見になるのですが、役所の考え方(指導)は
実態をよく見ていないため、この判決を参考にして再考をお願いしたい
と考えます。

一般的にパート社員は、自己都合において、働くことに何らかの制約を持つ
ことが多いため、基本的に正社員とは違う待遇に不合理さはないと考ます。
(手当、休暇は上記の理由から、概ね同条件にするべきですが)
なので、制約がなくなった際には、正社員への登用の道を開く仕組みにして
おけば良いと思われます。

しかし一方で、会社の都合で(主に人件費の削減を主目的として)、非正規
社員に正社員と同様な業務を与えることがあり、その場合は均等な待遇若しくは
均衡な待遇の確保は必須で、それをしないことに対して不合理性は生じてくる。

多分、いろいろな場面で言われている結論になってしまうのですが、各々実態に
応じた対応、判断が必要となるのだと。

実務上では、正社員として働くことを望まない社員もいることを認識して欲しい
と思います。

そもそも同一賃金同一労働とは?必要?

現在から将来に向かってのお話ですが、「同一労働同一賃金」の考え方自体
必要なのだろうか?と思っています。

問題となる退職金については、確定拠出型に置き換わっています。
賞与についても、賃金自体が、その人の専門性に付随するもの
なれば、有る無しはそう大きな問題ではなくなるかもしれません。

そもそも、正社員というくくり自体もいらなくなるかもしれません。
終身雇用制が崩れつつあり、副業と本業との境目がない世の中になれば、
なおさらです。
良い会社に入れば、それで一生安泰という時代は終わってしまったのだと
認識しなければならないのかもしれません。
それぞれが、専門的なスキルを身につけ、そのスキルに見合う業務に従事する
そんな時代になると、この問題も問題ではなくなる気がします。

本日も最後までお読み頂き、まことにありがとうございました。

 

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